数寄屋

数奇屋

 日本家屋って、大工さんの流儀とか、王道比率とか いろいろ束縛が多くて設計の自由度が少ないと、思われがちですね。

 畳の敷き方はこうでなきゃいけないとか、床差し天井はだめとか、各所木材の使い方方向面とか。

 建築主の方々が、ベテランの大工さんに、「こうしてほしい」なんて、進言すると 「そんな流儀から外れた事はできねえ。不細工だ」とか、怒られて自分の思うような 居室ができないなんて 経験談は よく聞きます。

 

 でも、本来は和風建築の自由度は 今の住宅よりかなり高いです。数寄屋というのは 「建築主の思う通りに自由に、好きなように建てるから、数寄屋」と呼ばれているわけです。

 

 建物のモジュール(柱間寸法)、屋根の角度 高さ ドアの幅 高さ 床 天井の高さ すべての仕上げ材 これすべて自由に建築主が決めてよいものです。返って大量生産を目的とした昨今の住宅仕様の方が 束縛される所が多いと思います。自由設計といっても、メーターモジュール限定なら全然自由設計じゃないですね。

 

 では、なぜ?ベテランの大工さんは 施主の思う通りに仕事をしないのか?

 

 それは ちゃんとした設計図・木材施工図がないからです。

 大工さんが求めている設計図とは、柱は102㎜ 鴨居は99㎜ 敷居は98㎜ 建具の見つけは27㎜ 鴨居の溝は21㎜など、すべての木材に細かく加工寸法が整理されていて 部屋全体の隅々まで整理された 図面の事です。

スケッチ画や 寸法記載のない図面は、「細かいところは 大工さんに任せるよ」と暗に言っているような物で、大工さんは それに向けて 自分自身で木材の木取り・加工寸法を考え、工場で加工して 現場に持ち込みます。

 

 そこには、㎜で数値化できない細かい加工も、木材の使用する方向面も検討されています。自社工場で完璧に木材を加工仕上げて 現場に持ち込んだ後、いきなり変更を要求されると、加工した木材はパーになるし、細かく計算された納まりが崩れるため、「そんなことできねーーー!!不細工だ」 となってしまうのです。

 

床の間など 白銀比・黄金比を使って 部屋の天井高さなどを基準に 落とし掛けの見つけ幅 高さ 違い棚の奥行寸法など 割り算しながら加工に入ります。だから 現場取り付け時に 「棚をもうちょっと高くしてほしい」などと言うと、それがたった5㎝でも 美しい比率が崩れるので 「だめだ!」となってしまします。

 

 昔は、床の間の出来栄えは、完成してみないとわからない状況でしたが 施主と大工さんの間に、設計士がこれを取り持って、大工さんには 木材加工図・施工図を、建築主さんには CG画像を提供して両者納得の上 施主の数寄な空間を作れば、こんなストレスは生まれませんね。