設計手法


 設計図・公図・地図などに書かれている北方位は 実際の現地では 少しずれがあります。

 CADなどでの方位は「地球は地軸が23.5度傾いた真球である」という仮定の上で決められたものですので 真球でも23.5度でもない現地では この方位は上手く働きません。

 当社では 現地で複数回 南中測量をして正しい方位を測量する作業から始めます。ほんの1-2度異なるだけで 建物の能力は変化し それが数十年先まで続きます。その土地の正しい方位を知る事は重要なことだと考えています。


何もない 砂漠の平原は 無風ですが そこに、3次元の構造物が 新たに建てられることによって その建物の周囲に日影ができ、四方に気温差が生まれます。

 この気温差が 建物廻りの空気と湿分を 永年止まることなく移動させる動力となり 住環境 建物の耐久性に影響を与えます。

 

 風量は機械式換気扇の数倍 気流速度が遅い場合でも 大量の空気が同じ方向へ流れます。しかも建物がそこにある限り 止めることはできません。

 

このエネルギーを事前に予測計画し 建物設計を進めます。

 熱環境の良い部屋は リビングなど家族が集まる部屋に。

 夜間 過ごしやすい部屋は 寝室に。乾燥しやすいエリアは 浴室へ。臭気を排気しやすいエリアにはトイレを。

この図を基に 各室をエリアに分け配置していきます。

 もし、この最初の日影検討図もなく 間取りだけを追求していった場合、トイレの臭気はドアを開ければすぐに室内に流れ込む。浴室はカビの繁殖地となり 寝室は暑くて寝苦しい。そんな完成となる場合があります。 

 


 初期の基本設計段階で 平面的な気流の方向を検討した後、図面を3次元CGとして 再チェックします。窓の位置やサイズ 軒の深さを微調整していきます。

 事前に カビの繁殖しやすい部分 老朽化が早い部分を予測して その予防対策を計画します。

 

 

 

当社は同じ建築設計事務所でも おしゃれなデザインや 最新の設備機器の提案を得意とする方々とは異なります。IT技術を使い 空気や日照など 住む人の目には見えないが、大きな影響を及ぼす素材を 計画設計していきます。完成した建物には 予定通りの風が流れていることでしょう。