土壁の性質と施工費用

 

 先に 土壁のデメリットから 説明します。

 

 1、工期が長くなる事

 

 まず、大工さんが上棟建て方をした後、柱と柱の間に、通し抜き板を約1寸~1.5寸ピッチで固定し、この間に竹を組みます。

 過去は 稲から取れた藁を使用して 抜き板に編んでいきましたが、最近はビニールひもを使います。藁は湿気を吸って 腐食しますし、最近ではこの藁さえもなかなか手に入らない状況もありますので、代替品としてビニールひもを使います。竹は防腐処理された製品が 今現在でも大きな材木屋さんなら手に入ります。十分に自然乾燥された竹を使用します。

 

この上に、粘土を現場に入れ、水でよく練り、1壁づつ竹の両目に約20㎜づつ塗り込んできます。竹と竹の間に粘土が充填するように、塗り乾燥させます。この乾燥期間が天候にもよりますが 約1か月はかかります。もともと粘土なので湿潤な土質の上、作業前に水を混入しますので 相当な水分を含んでいます。

 この粗壁が乾燥し、色が白っぽく変わり 土壁自体にひび割れが起き始めるまで 乾燥させます。

 

 この間、大工さんは 壁に関係ない作業を進めますが、乾燥が進まない場合は、工事現場は施錠して 数日間だれも作業しないで、乾燥だけを進める場合もあります。

 

 乾燥が完了しましたら ひび割れた粗壁の上に、目の細かい粘土をさらに塗り足していきます。各両面に10-20㎜程度。ここまでで、70㎜~80㎜程度まで壁厚が付きます。そしてさらに1か月程度乾燥します。

 

 その後は、最終仕上げ素材に合わせて 表面を仕上げていきます。

 

 

2、工事費用が高い

 

 資材自体の費用はそれほど高くありません。合計で10万円はしない程度でしょう。しかし、これを施工できる職人さんが 現在少ない状況にありますので 1日2人1組で、1日工賃4-5万円。これで塗る作業を20日行えば 工賃だけで100万円となります。

 おおむね 壁の平米計算で 1万円前後。木造2階建て住宅40坪程度の、外壁面の面積は概算で約70平米くらいとすると70-80万円くらいかかることになります。

 実際には 断熱材が必要なくなりますし、土壁のまま仕上げてしまえば クロス工事もなくなりますので全体としては もう少し増加費用は少なくなります。

 

3、壁の隙間風

 

 抜き板工法 土壁工法は 地震に対してゆっくり振動を吸収して地震がおさまればまたもとに戻るという 動きをします。この際に、土壁と柱の突合せ部分”チリ”といいますが、この部分にクラックが入り、ひび割れたようになります。

 また 乾燥期間が少ない場合には、住み始めてから土壁は乾燥をつづけ、収縮し、〝チリ”部分に隙間が生まれたりします。

 土壁は ”気密性”という面では 低いと言わざるを得ません。

 

4、化学物質

 

 土壁といえども、最近施工する場合には、土壁に混入する接着剤などに 若干の化学物質が含まれています。F☆☆☆☆の基準はもちろんクリアしているものの、0%ではないのです。これは ひび割れなどを防ぐ役割をします。「完全な健康住宅です」とは 今は言い切れない状況があります。

 

 


 

メリット

 

健康素材・湿度調整・強度・メンテナンスのしやすさなど 土壁のメリットは いろいろうたわれています。

 

 当方で、特に解説すべき性能は ”蓄熱性”です。

 

 実際に 私自身が この土壁の家に住んでいますが、夏は窓を開ければヒンヤリ エアコン要らず。温暖化の進んだ昨今でも 特に夜寝る際に、エアコンをつけることはまずありません。

 

 海外でのレンガ造りの建物など、基本的に地球どの地域でも建物は ”蓄熱性〝 ”比重” ”重量感”を 基本的に必要として計画されています。「日本は地震が多いから 建物は軽くしたほうがいい」とも言われますが 最近ではほぼ解消されています。

  日本は 木材とともに 芳醇に用意できる建材として、粘土と 石灰質、セメントがあります。しっくいなども輸入に頼らず国内供給できます。


床の間 ”TOKONOMA" ”TATAMI" Japanese style room

 

工事金額について

 

 上記説明した 壁の平米単価約1万円に加えて、表層の仕上げ内容によって さらに費用が加わります。

 和室などのじゅらく壁塗り、漆喰塗りなどは 平米で、約4-5000円程度。

 和室については トータルすると 平米あたり15000円となります。8畳和室ですと、平均25平米の壁がありますので、ざっと375000円という計算となります。

 

 とはいえ、土壁は高価な素材です。採用をすれば、建物の総工事費用は必ず増えます。

 

 ただ、初期費用増加分以上に、その効果が期待できる おすすめの素材です。