いの一番

 

 墨付け 板図と言いまして、昔は大工さんが 紙に書かれた図面を、墨つぼと、墨さし で薄いベニヤ板などに、書き写してそれをもとに、木材加工していました。

 昨今はプレカット加工が ほとんどで、板図を書くことも 少なくなりました。

 大工さんが 図面を読んで解釈するときは、いまでも い・ろ・は・に・ほ・へ・と・・・で番号を書きます。設計事務所がA/B/C・・・と記載してあっても、これを い・ろ・はと変換するのです。あ・い・う・・・ではありません。

 同時に1・2・3・・・・も 一・二・三・四・・・と書いていきます。

 

 ”いの一番”というと、何が何でも最初の最初という意味ですが、この”いの1番”は、木造建物を上棟するときに、まず最初に立て込む ”柱”を言います。上棟の時には、木材加工を自らした大工さん以外に、当日だけ応援に駆け付けた 大工さんも数名参加します。”あうんの呼吸”、”お約束”というか、黙っていても、”いの一番”から建てましょう。という合図のもとに、初対面の大工さん同士でも、スムーズに作業を進めるために、今でもこの記号は使われているんですね。

 

 柱の足元や、頂部に、”へ 五”などと墨で書くわけですが、四角い柱4面あるうちに、これを記入する位置。文字の向き、などにも 柱の取り付け方向を示す意味が含まれています。これでうまく上棟すると、書かれた文字はすべて同じ方向を向いていることになります。

 

 鉄骨造やRC造では 今は Aの1 Bの3というような記号を使いますけど、木造だけは この名残りが残っていますね。

 

 プレカット工法が流行り始めたころは ベテランの大工さんが

    「8なのか?Bなのかわからねえよー」 「数字の二なのか、いろはの”に”なのか、わからねえ」

 などと、よく文句タラタラ言われながら、上棟したもんです。

 

 いろは、と 一二三四には 似た文字の並びが少ない 作業を間違えにくい という利点もあるんですね。